2026年1月19日、株式会社 Digital Entertainment Asset(以下、DEA)は、ゲームのロジックで公共性を設計し直す研究・実装機関「DEA LABO(DEAラボ)」の発足にあたり、今後の活動に向けた最初の場として、本イベントを開催しました。

当日は「DEAラボ所長」である、DEA代表取締役社長の山田耕三を中心に、「DEAラボ クリエイティブアドバイザー」の株式会社SIGNING 亀山淳史郎氏とともに、株式会社ワールドエッグス 波房克典氏をゲストに迎え、「ゲーミフィケーションのその先」にある社会設計の可能性について語り合いました。本記事では、当日の熱気ある議論の模様をお届けします。

 

01. DEA LABOが見ている世界

〜「ゲーミフィケーション」ではなく「社会のリデザイン」〜

既存の行動にポイントやバッジを付与するだけの「ゲーミフィケーション」を超えて、DEAラボは何を見据えているのか。議論は、ラボ設立の経緯とその視座の確認から始まりました。

山田:最初は「ゲーミフィケーションで課題解決をいっぱいやってるんですよ」と波房さんにお話ししたんです。そうしたら、「山田さん、DEA社のやっていることはゲーミフィケーションという言葉ではくくれないんじゃないですか」と言われて。「どういうこと?」とハッとしたんです。

波房:「義務や努力でやるんじゃなくて楽しくやっちゃおう」という文脈でゲーミフィケーションが語られることは多いですが、DEAがやっていることは、「そもそも社会のルールを書き換えるって話なんじゃないの」と直感したんです。

亀山:僕も取り組みを聞いて、めちゃくちゃ面白いなと思いました。電柱の写真を撮るゲーム『PicTrée(ピクトレ)』が、そのまま社会インフラのメンテナンスにもなっている。「ゲーミフィケーション」ではなく、社会そのものにゲームのロジックを入れ込むことで、より良い社会のデザインをしているんじゃないかと。
かつての「クールビズ」も、「ネクタイを外していいんですよ」という新しいルールを作ることで、結果的に地球を冷やすという目的を達成しました。個人の「涼しいからいいよね」というインセンティブが、社会課題の解決に繋がっている。そうした「新しいルールメイク」こそが有効なんです。

 

02. テレビ・エンタメが持っていた「社会変革」のDNA

〜『なんでも鑑定団』と『池の水』が変えたもの〜

議論は、山田の原点であるテレビ・エンターテインメントの話題へ。「テレビ」が果たしてきた役割と、ゲームとの共通点へと展開しました。

波房:山田さんはテレビ東京のご出身ですが、テレ東の長寿番組である『なんでも鑑定団』は番組でありながら、単なるエンターテインメントにとどまらず、人々の価値観そのものに作用してきた番組だと言えます。自宅の蔵に眠る品を鑑定してもらうという体験を通じて、「自分の先祖や家族が大切にしてきたものには、価値があるかもしれない」という視点が社会に共有されていった。その意味で、この番組は一つの「社会の書き換え」を実現していたのではないでしょうか。

山田:『池の水ぜんぶ抜く』なんかもそうですね。外来種駆除という真面目な社会課題なんだけど、みんなで参加して泥だらけになりながらやる。番組を制作するテレビマンは視聴率も欲しいですけど、どこかで「社会をひっくり返してやろう」「面白いことやってやろう」というエンタメが持つDNAを持っているのかもしれません。

亀山:ゲームも同じですよね。『信長の野望』で小学生が異常に戦国大名に詳しくなって、治水とか外交とかやり始めるみたいな(笑)。「必要とされていないが、次の社会にとって必要になるかもしれない提案」を含んでいるのが、本来のエンターテインメントの力なんだと思います。

 

03. Public Play Designとは何か

〜エンターテインメントのロジックで、公共性を演出する〜

行動にゲームを足すのではなく、社会そのものを“プレイ可能”にする。-それが「Public Play Design」です。そのヒントは、デザインにおける「余白」の思想にもありました。

波房:社会を書き換える時に大事なのは、「コピーライト(権利保護)」から「コピーレフト(権利開放)」への転換だと先輩が言っていました。「手放してくんだ」と。ガチガチに決めて「このルールじゃなきゃダメ」というよりは、手放すことでみんながクリエイティブしていく。クールビズのロゴも、みんなが使用可能にして拡散したからこそ画期的だったんです。

亀山:万博の「ミャクミャク」のデザインも、皆が自由に使ってもらえるようなパブリックドメイン化されていて、結果として世界観が広がっています。「Public Play Design」は、発信側と受け手側の対立構造じゃなくて、その間で楽しんでくれる人たちに期待する、「余白のデザイン」がすごく大事だと思います。

 

04. 経済合理性を超える「熱狂」と「役割」の魔法

〜報酬はあくまで参加するための“言い訳”〜

なぜ人は、面倒なことでもゲームなら熱狂して取り組むのか。その鍵は「報酬」以上に、「役割(ロール)」が与えてくれる“無敵感”にありました。

亀山:経済学で言うゲーム理論は「合理性に基づいて人は行動する」という前提ですが、山田さんがやろうとしているのは「エンターテインメントにおける熱狂」ですよね。「攻略のための熱狂」って、もはや短期的なポイントや報酬のためということを超えてみんなやるじゃないですか。

山田:報酬はもちろん大事ですが、人を動かす時には「言い訳としてワークする報酬」というのがやっぱりあって。「報酬があるからさ」と言えれば、かっこつけずに参加できるんです。あと、テレビ局時代に思ったのは、カメラを回していると「無敵のメンタリティ」になるんですよ。普段なら声をかけづらい相手にも、腕章をしてカメラを持っていれば自然に話しかけられる。ゲームが与えてくれる「役割(ロールプレイング)」には、自分に対するメタ認知を変えて、行動を変容させる力があるんです。

波房:ゴミ拾いのNPO「グリーンバード」でお揃いのビブスを着るのも同じ効果ですよね。同じユニフォームを着ることで世界観を共有して、役割を演じられるのが大事な気がします。

 

05. パブリックゲーマーという存在

〜世界の「解像度」を上げるプレイヤーたち〜

「Public Play Design」が機能し始めると、誰に頼まれたわけでもなく自律的に動き、コミュニティを牽引する「パブリックゲーマー」と呼ばれる存在が現れます。

山田:『PicTrée(ピクトレ)』のユーザーさんは、北海道の広大な土地にある75万本の電柱をわずか3ヶ月で撮影してくれました。彼らは、電柱をジロジロ見ながら街を歩くことで、「あ、こんなところにこんなものがあったんだ」と気づく。ゲームを通じて、現実世界の解像度が上がっているんです。そうすると、トッププレイヤーたちは「脇道にそれていいんだ」と気づき始めて、遊び方を自分で開発し出すんですよ。

波房:ゴミ拾い活動でも、オーガナイズする人がいないとゴミ拾いって起こらないんです。「やろう」と呼びかける人がいて初めて、参加する人が現れる。この「パブリックゲーマー」という存在は、自分で熱源となって周りを巻き込み、影響力を持ち始める人たちですね。

 

06. DEA LABO始動

〜求む、パブリックゲーマー〜

議論の最後、DEAラボはいつ発足するのかという問いに対し、ここが「始まりの場所」であることが宣言されました。投機的な期待ではなく、純粋に社会を面白く変えようとする仲間たちへ向けたメッセージで、イベントは幕を閉じました。

山田:このDEAラボ、いつ発足なんだと言ったら、今日が発足です。ブロックチェーン業界は投機で大きくなってきた側面もありますが、ラボは違います。最低限、自分たちが何をしようとしているか分かっている「パブリックゲーマー」であってほしい。

亀山:なんか場所を使って、街がどう変わっていくかとか。

山田:街ごと変化が見れたら楽しいですよね。面白い時代ですから、そういった人たちと、まだ取り組んでない領域をぜひやりたいですね。どういう次回にするかも、この後皆さんとお話しできたらと思います。

 

■関連リンク

DEA LABO 公式サイトhttps://dea.sg/dea-labo/

DEAラボでは、今後リアルイベント開催以外にも記事コンテンツなどで随時、関連情報を発信してまいります。
また、リアルイベントは今後も定期的に開催する予定としており、Peatixや各SNSなどで周知してまいりますので、その際には詳細をご確認いただければ幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。